板金設計の職人ワザ(2):いきなり百円ショップのステンレス製50cm定規の原価を概算してみよう

  1. 本サイトの標題の下では、「材料費を概算できない寿司屋、蕎麦屋、ラーメン屋の店長がどこにいるのか?」という刺激的な文章で始まりました。板金設計も同じです。板金材料のQCD、つまり、Q(材料特性)、C(材料原価)、D(材料の入手性)をこの先、学んでいきましょう。

  2. 早速ですが、いきなり課題です。
    図表1は、100円ショップで販売されているステンレス製定規です。設計見積りによる「材料費」と「加工費」と「型費」、つまり、コスト(原価)を求めてください。
    材質:SUS430、ロット:50,000本の場合とします。目盛りは無視します。型は単発型としてください。



    【図表1】

  3. 解答の前に、興味ある話をしましょう。
    世の中にライバルがいる場合、工業製品でも衣料品でも、飲食店でもそのほとんどが、『原価×3=定価』で定価を決めます。
    たとえば、750円のラーメンの原価は250円です。街中にライバル店が存在する以上、味と量で勝負するのは当たり前。次は定価で勝負します。しかし、無謀な低価格は自爆の命取りです。そこで、原価の3倍をもってくるのが、経営上の常識です。
    しがたって、定価750円で街中のラーメン店が競っているのであれば、原価250円で抑えるのが必須です。原価45%、つまり、750×0.45=345円の原価では店が潰れると言われています。


  4. 一方、百円ショップの商品原価は平均して店内目標33円です、「平均」とは、たとえば原価50円の商品が存在していても、原価20円の商品を売って、店の平均原価33円を実現できれば安定経営と言えます。 その代表企業が「ダイソー」であり「キャンドゥ」です。                                 


  5. さて、図表2をみてください。この50cm定規の原価は、当事務所の概算(設計見積り)では46.3円でした。ちなみに国内生産としての見積値です。この値では百円ショップの中では「問題商品」です。前述の『原価×3=定価』なら、定価140円となります。



    【図表2】
  6. 国内生産や海外生産の判断や、それぞれの原価まで算出するには、ここだけのページでは無理があります。今後、順を追って、あなたを導きます。ご期待ください。

  7. ところで、設計見積りは、以下の実務式があります。
    設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費』・・・です。

    設計見積とは、なんと足し算だけで、引き算も掛け算も、割り算も微分積分もありません。たった3項目の足し算なのに、隣国巨大企業からは、「自分が設計した見積りもできない日本人設計者」とか「足し算ができない日本人設計者」と言われるのは、毎度、悔しい気持ちでいっぱいになります。


    そこで、上式の「材料費」の概算から順に導いていきます。「材料費も計算できない日本人設計者」と、隣国だけでなく、国内からも言われないようにしなければなりません。悔しいですよね!