4.曲げの故障モードとその影響

  1. 次は、「曲げ」に関する「加工法を知る」に入ります。ポイントは、前述の「打ち抜き」と同じ要領です。
  2. 材料力学では3つの内、「曲げ」だけを考えれば良いのです。また、曲げは図表-5に示すように引っ張りと圧縮に分解できます。

    【図表ー5】曲げの説明図
  3. したがって、曲げ(=引張り+圧縮)から考え得る「故障モード」を推定します。その故障モードは、・・・

    ① 変形
    ② スプリングバック
    ③ ストライキング(による不具合)
    (注:ストライキングとは加工法の名称)
    ④ クラック

    たった4つです。
  4. そして、前記の故障モードを当て嵌め、表の右側に記載される「故障の影響」をみます。故障の影響は、故障モードに起因する具体的なトラブル事例と理解してください。
    さらに、イメージが湧くように図表ー6に「故障の影響」の図(図⑦から図⑬)を設けました。この図の中のいくつかに「生活シーンから持ってくる」ことで、チェックすべきポイントはどこにあるのかを示唆しています。

    【図表-6】曲げの故障モードとその影響
  5. 例えば、図表-6の中の図⑧のように板金を曲げる場合、曲げ部分が外側に膨らみ出張ります。その出張り量⊿Lは、・・・

    ⊿L≒0.15×t(t:板厚)

    となります。
  6. このL型板金の側面を壁にぴたりと押し付ける場合、壁とこの部品間に約0.15tの隙間が空いてしまう訳です。この場合、設計中に曲げ(=引張り+圧縮)のみを考え、故障モード:変形 ⇒ 故障の影響:曲げ部の変形、出張り発生と推定するのです。
    そして、「生活シーンから持ってくる」の実施例として、「指を曲げる」、「腰を曲げる」から「曲げ部分が出張る」を予測できます。
  7. 予測できたなら、少なくとも、その出張り分だけは予め凹ませておこうと知恵が働くのではないかと思います。すると、図表-7のような展開図で示すアイデアが浮かぶのではないでしょうか?

    【図表-7】板金曲げによる出張り対策例
  8. 第2の考案として、密着される壁に対して、出張る部分に相当する位置に穴を開けておくという方法も浮かびます。
  9. このような概念、つまり、キーワードで表現すれば、「故障モード」、「故障の影響」、「生活シーンから持ってくる」を設計中に考慮し、無難に加工できるか否かを推定します。