2.日本は加工図面、アメリカは検査図面

  1. 話変わって、日本は「製造図面」です。つまり、製造するための図面です。したがって、前述のように、昭和初期の設計者にとっては必須の知識だったのです。
    一方、アメリカの図面は「検査図面」です。したがって、職場の先輩は「最近の若手技術者は検査方法を知らない!」と主張するのではないでしょうか?


  2. 余談になりますが、最近の日本の図面はアメリカの検査図面に仕組みを一部に取り入れたため、製造目的の図面と検査目的の図面がごっちゃになってしまいました。その結果、昭和初期のオジサン達が社内教育ができずに、今でも、製図の専門書が売れており、セミナーが盛んに開催されているのは異常な現象です。
    図面法や作図は学校で学ぶべきであり、不足分は社内教育すべきレベルの知識ではないでしょうか?


  3. また、筆者と親しいアメリカ人技術者が毎年、桜の季節に日本へやってきます。そうすると、酒の席ですが、彼曰く、「日本人にはスペースシャトルは設計はできないし、製造もできない!」と自慢話をします。
    スペースシャトルのパイロットは総勢7名であり、無事に地球へ戻る「生還率は99.9999%」で設計され、製造され、検査されているとのことです。これは、アメリカの図面が「検査図面」であるからこそ成立するとのこと。つまり、検査図面とは、「部品検査はこの一通りですよ」という意図の図面なんです。





  4. 大学を卒業して、日本一大きな総合電機企業に就職した筆者は、もちろん、日本企業ですから「製造図面」を作図していました。訳あって、転職した企業はアメリカ、つまり外資系企業であり、今日でもその企業は、日本国内でもアメリカの「検査図面」を作図しています。


  5. そして、とても驚くことは、その企業の試作品をはじめ、量産部品も検査図面で発注し、その図面に基づいての日本、韓国、中国などの国で製造され、検査されて納入されていることです。
    したがって、前述の「最近の若手設計者は加工法を知らない」というセリフは、この企業に勤務中の30年間、聞いた試しがありません。
    製造方法は製造部が考えることであって、設計者が作図した図面に基づき、最良の加工法を考えます。重複しますが、これが生産技術部であり、製造部の仕事なのです。
    言い過ぎですが、ちょっとは知っている設計者の加工知識に対して、余計な口を出すなということは何度も言われた筆者です。




  6. とは言っても、おそらく、皆さんは日本企業に勤務していると思われるので、少しぐらいの加工方法は勉強しましょう。しかし、物事には順番、職人になるための順番、その修行にも順番と言うものがあるのです。その一つが図表ー3です。
    【図表ー3】

  7. したがって、その順番を主張するのであれば、加工法の前に「機械材料」を学びましょう。これは、次回のコラムで解説しますので、楽しみにしてください。


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  8. ところで、・・・
    「先生!どうして加工法の前に材料の勉強なんですか?」という質問を度々、受けます。そのとき、筆者は、街の料理教室で、「食材の学習前に、調理方法を教える料理教室を探して、私に教えてください」と回答します。ほぼ全員が納得してくれます。
    料理教室って凄い!と思いました。