2. 事例:技術論文におけるインパクトのある書き出し

それでは、以下に示す例題(課題)を見てみましょう。

【課題:社告・リコールについて250字以内で述べよ。】
――――― 通常の書き出し例 ―――――
【タイトル】急増する社告・リコールについて
【はじめに】
昨今、日本を代表する大手の家電企業や自動車企業の社告・リコールが続出している。社告・リコールは、多くの顧客に単なる金銭的や精神的なダメージを与えることでは済まず、財産や命までも容易に奪い去っている。
百歩譲って、それらが時間的な経過で許される条件は、企業の努力によって、二度と繰り返すことのない不祥事となることである。しかし、現実は異なる。一度、大きな損失額を発生した企業が何度も繰り返しているのである。以降は、この原因を探ってみたい。(217文字)

すらすらと読める優等生的な書き出しですよね。とくに悪い箇所はないので、あなたは何が問題なのかと思うかもしれません。それでは、下記の書き出し事例はいかがでしょうか?

【タイトル】社告・リコールはいつもあの企業
【はじめに】
再び、あの企業!昨今、大きな社会問題にもなっている社告・リコールの発生である。単なる事故で済まされるはずもなく、顧客の財産や命までも容易に奪い去っている。問題は、この不祥事が減衰ではなく増加の傾向にあり、さらに、その企業名が特定化されることである。自動車メーカーでは、A社とB社。家電業界では、C社とD社とE社。OA事務機器ではF社となっている。
以降は、特定化企業に焦点を当てて、深く原因を探ってみたい。(202文字)

新人設計者のあなたには、どちらの書き出しにインパクトがありましたか?後者の方が、早く次を知りたい、読みたいと思いませんでしたか?
ただし、技術者ゆえに、あまり文学的な表現やテクニックは考え物です。どのような場合でも、「飲み過ぎ」、「食べすぎ」などの「何々し過ぎ」は禁物ですよね

今ひとつイメージが沸かない場合は、映画のプロモーション(映画の宣伝)を観察しましょう。プロモーションで映画の始終(全編)を伝えては、何のためのプロモーションかと思います。一方、何が魅力なのと伝わらなければお客は入りません。当然、映画は赤字となってしまいます。
したがって、その映画を見たいという場面(シーン)をいくつか探してプロモーションを作成します。練りに練っての作業です。
プロモーションの出来具合は、映画の興行収入を大きく左右すると言われています。