3.打ち抜きの故障モードとその影響

  1. それでは、いよいよここから「打ち抜き」、「曲げ」、「絞り」に関する「加工法を知る」に入ります。ポイントとして、この設計でお客様に迷惑がかからないだろうか?とか、この設計が最良の低コスト設計であろうか?と気遣いを持つことが重要です。
    そして、チェックすべきポイントはどこにあるのかを本項は案内します。先ずは、最も頻繁に使われる「打ち抜き」からです。
  2. 従来の「加工法に関する知識」は、
    ① 穴同士の間隔は、板厚によって決まり、何ミリの距離をとれ。
    ② 曲げ近くの穴は、曲げの面から何ミリの距離をとれ。
    というところから記載されていました。
  3. 本項は、打ち抜き=せん断(3つの材料力学の一つ)であるが故に、せん断から考え得る「故障モード」を推定します。故障モードとは、「故障の現象」のことです。
    その故障モードは、・・・

    ① 変形
    ② ダレ
    ③ せん断面の傷
    ④ 破断面
    ⑤ バリ

    たった5つです。設計中に打ち抜き部分があったら、材料力学のせん断の図表-1を見ましょう。
  4. そして、前記の5つの故障モードを当て嵌め、図表-3の右側に記載される「故障の影響」を見ます。故障の影響とは、故障モードに起因する「具体的なトラブル事例」と理解してください。


    【図表-3】打ち抜きの故障モードとその影響
  5. さらに、イメージが湧くように故障の影響の図(図①から図⑥)を設けました。この図の中のいくつかに「生活シーンから持ってくる」ことで、チェックすべきポイントはどこにあるのかを示唆しています。
    例えば、図表ー4に示す穴開けパンチ機で硬質紙にパンチ穴を開けるとき、故障モードの変形、ダレ、せん断面の傷、破断面、バリのすべてが観察できます。とくに、変形、ダレ、バリは顕著に観察できます。

    【図表-4】事務用の穴開けパンチ機
  6. この概念、つまり、キーワードで表現すれば、「故障モード」、「故障の影響」、「生活シーンから持ってくる」を設計中に考慮し、無難に加工できるか否かを推定します。
    不安要素があれば、社内の先輩方へ聞き、最終的には加工側との打ち合わせがお勧めです。
  7. 後者の加工側との打ち合わせですが、あまり低レベルな内容は質問ができません。したがって、今回のコラムに記載されるように、即戦力としての知識が必要です。