2.コイルばねのフリクションを利用した軸の固定方法
- 前回の「C02.ねじを使用した軸の固定ワザ」は、一般的にもよく見られる設計事例でしたが、今回は、少々希少な事例となります。希少と言っても、人気がないとか複雑怪奇とかの意味ではなく、設計として知られていない事例であり、正しく、設計職人に相応しい設計伝承の事例だと思います。
なお、「C02.ねじを使用した軸の固定ワザ」は、10/02現在は、投稿欄にありますよ。 - 次の設計仕様①②の場合、・・・
① 軸は回転しても良いが、軸方向(スラスト方向、図中の矢印の方向)に固定したい。
② ただし、軸方向の固定は押せばある程度スライドできるようにしたい。
という場合、図表-4の事例が役に立つかと思います。 図中のコイルばねは、軸に密着するように設計します。この密着度で軸方向の固定力が決まります。
したがって、コイルばねの内径が軸の外径よりも狭めて設計する場合が多くの事例です。図中における軸の左端がコイルばねを通し易くするようにテーパー形状になっていることにも注目してください。
【図表ー4】
残念ながら、いきなり設計はできません。
軸方向に関する固定力は計算ではほぼ不可能であるため、いくつかのコイルばねを準備してのトライアルが必要です。
また、コイルばねの代わりにゴムやフェルトを用いる場合がありますが、共に経時変化が大きいため、コイルばねによる軸方向の制動の方が無難です。
図表ー5は、少々複雑な構造を有する軸の固定方法です。以下、詳細に解説します。
【図表ー5】
① 図Aは、筐体をスケルトンで表示し、全体構成を示している。
② 図Dに示すカラー(Collar)には凹部があり、図中のツマミを右方向へ回転することで、カラーがねじ込み方向へ強制移動し、バルブピンの上下移動をねじ込み力で規制できる。
③ 同、ツマミを左方向へ回転することでバルブピンは、図Dに示す圧縮ばね押圧でその位置に留まるが、バルブピンを上下に押せば可動し、任意の位置で留まる。 - 図表ー6も、コイルばねと金属ボールを使用した少々複雑な構造を有する軸の固定方法です。以下に詳細を解説します。
【図表ー6(その1)】
【図表ー6(その2)】
① 図Aは、カラー(Collar)の中に軸が入っており、軸は矢印の方向に移動できる。
② ただし、断面図Cに示すように、カラーの内側に設けたV字溝に、軸側に設置された金属ボールが嵌り、軸は一時的に位置決めされている。
③ 断面図Bでは、軸側に設置された金属ボールとコイルばねが装着されている構造が理解できる。
④ 断面図Eにおけるカラー端部には、穴の内径縁部にC面を設け、組立向上に工夫する必要がある。
⑤一時的は固定力を高めるためには、コイルばねの変更、V字溝の変更、金属ボールのサイズ変更などで、金属ボールとV字溝の面圧を変更する。
⑥金属ボールは用途によっては、樹脂ボールに代用可能である。
おつかれ様でした。また、お会いしましょう!