今回は、低コスト化を意識した賢い軸の各種固定方法を設計伝承します。教科書や専門書にはなかなか記載のない事例です。
ただし、注意が必要です。それは、いきなり実務には使うことはできません。それは、設計職人の恥です。少なくとも、トライアルする設計行為が必要であり、手抜きは禁物です。

1.ねじ1本で軸を固定する方法

  1. 図表-1は、一般的な軸の固定方法です。
    軸に穴を開け、ねじ1本で固定します。ただし、図中の右側に示すように、軸に穴をドリルで開ける際、ドリルの先端が滑ってしまい、食いつきが悪くなります。いわゆる加工性に難があります。筆者としては推奨しませんが、事例としてはよく見かける方法です。
    したがって、加工者と話し合う必要があります。
    これを「餅は餅屋」または、「餅は餅屋と相談」と言います。コラム「B」の『B02.樹脂設計は「餅は餅屋」がコツ』を参照してください。
    加工者が問題なしとするならば、筆者としてのコメントはありません。


    【図表ー1】

  2. 一方、図表-2は、筆者が推奨する設計伝承です。ねじに注目すると、前述の不具合を回避するための平面部を設けました。
    【図表ー2】


    この平面部は旋盤での加工はできません。フライス加工法となります。その分だけ、前述の事例よりコスト高になりますが、筆者は加工上必要な形状の形成は「コスト高」とは考えません。穴加工法に必要な平面部であり、ねじの着座安定のため、着座不良防止のための平面部です。


    【図表ー3】


    図表ー3には、ねじの着座不良の説明図を掲載しました。着座不良の対策は、いずれこのコラムで解説しますが、急ぎたい人は、下記の書籍を入手してください。当事務所の書籍は全国の公立図書館に蔵書されています。ご活用ください。


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    また、図表ー3の詳細図に示すように、ねじには座金とばね座金を挿入しました。機械設計の基本形としては、「ねじ」単体ではなく、着座と振動によるねじの緩み防止のための「ばね座金」の装着は、設計職人としての常識です。
    つまり、「ねじ+座金+ばね座金」となります。これも、筆者の設計伝承とします。