復習のご案内:実務講座(書籍版)の 第2章の公差編
- p21からp25:それでは、「第2章の公差編」から始めます。実は、講師にとっては本日一番の気の重いセクションでした。なぜなら、当事務所のメイン業務は設計コンサルテーションであり、そのクライアントには隣国巨大企業様がいます。
もうあれこれ10年以上のお付き合いです。日本語が達者な役員さんたちとの食事会でよくからかわれるのが「足し算ができない日本人技術者!」です。それがこのページです。80±?の「?」ですが、工業国の中で日本人だけができないのです。
なぜできないのか?
文章で答える分には簡単です。それは、日本の教科書に公差、つまり、累積公差計算法の記載がないのです。ということは、教える先生もいないのです。
ここで度々反論がきます。
「先生!確かに学校では教わっていないのですが、僕は計算できますよ!」と。そこで、意地悪するわけではないのですが、p21に記載の①と②の使い分けや、使える条件を説明してくださいというと、
皆、下を向いてしまいます。
さらに、その②の式はなんと呼ぶ式ですかと質問すると、もう、立ち上がれません。
少なくとも、使える条件とは各構成部品の精度が「正規分布」を成すときだけに使用できることは記憶しておいてください。 - p24:②の式の名前は「分散の加法」と呼ぶ式です。少なくとも、日本人技術者が呼ぶ「二乗和」は、やめた方が無難かもしれません。
- p27:是非、ダウンロードして有効活用してください。
- p30からp35:正規分布のほか、一様分布という単語も理解してください。p31の図表2-10に示すように、構成部品のたった一つに一様分布が存在するとその組立部品も一様分析になってしまいます。正規分布とは、理論的には「無検査可能部品」です。しかし、それでは心配だから、各企業は「抜き取り検査」や「ロット検査」を実行しています。
一方、一様分布とは全数検査が必要です。後者が圧倒的にコスト高であることは容易に想像ができると思います。したがって、ベテラン設計者とは、各構成部品をすべて正規分布で構成することがベテランゆえのワザと言えます。 - p36:ここまで学んで、部品10点や15点の組立体の累積公差を求めた技術者がいました。「先生!実際と合わないですけど!」。それは、無茶というものです。その部品をみると、ステンレス材あり、アルミ材あり、樹脂材ありで少なくとも熱膨張率が異なります。
また、形状も傾斜面あり、曲面ありです。それを小学校1年生の足し算と引き算や、中学1年生の平方根(ルート)で求められると思いますか?当事務所では「同一材質で5点までで、傾斜面無しと曲面無しが条件」と便宜上、指導しています。ただし、学術的な根拠はありません。 - p36:それでは、傾斜面や曲面や各種材料の熱膨張や、取り付けひずみや溶接ひずみなどを考慮する場合はどうしたら良いかと言えば、今では安価な公差解析ソフトが販売されています。
ここで補足しておきないことは、2、3社を選択したら、必ず貴社へ訪問していただき、そのアプリでデモンストレーションを依頼するとよいと思います。世の中では人気のあるソフトでも、貴社製品の材質や各種のパラメータが適合しない場合があるからです。最適なアプリをデモンストレーションで選択しましょう。