復習のご案内:実務講座(書籍版)の 第4章の樹脂編

  1. p121:第3章の「板金編」は、この第4章「樹脂編」、および、第5章「切削編」の基本形となります。したがって、第3章板金編の長い復習をお願いしました

    一方、樹脂部品しか扱っていない技術者の場合も、板金部品の基礎知識が基本形です。しつこいですが、「板金編」は、省略しないでください。



  2. p122:樹脂設計を難しく、難しく教える熟年の講師の責任で、「樹脂設計は難しい!」と印象づけられてしまった若手技術者が多いようです。私の若き日の時代、設計難易度第1位は鋳物部品の設計でした。それが、現在は「樹脂設計」が第一位になったと、確か私もセミナーや書籍で公言しています。


    しかし、それは、トラブルが多いので難易度第1位と言っています。トラブルさえなければ、そんなに難しい材料ではありません。

    なぜなら、p16の図表1-6を観察すると、加工法のなんと77.1%が「射出成型法」で製造されるからです。もし、皆さんが学生でペーパーテストを実施した場合、「射出成型」の知識だけで77点が採れるのでは思います。



  3. p122からp126:板金編同様に、まずは、射出形成独特の単語から勉強しましょう
    p126の図表4-2-1を見てください。その図には記載はありませんが、セミナー中に教えた「ペレット」「加熱」「冷却パイプ」、そして、p124の図表4-1-3に戻って、成形屋さんとの打ち合わせ中に一番よく出てくる単語が「キャビティ」と「コア」です。



  4. p141:板金編でも記載しました。これが即戦力のひとつですと。







  5. p146:樹脂の射出成型品の場合、p124の図表4-1-3に戻って、「キャビティ」と「コア」が記載されています。次のp146の図表4-4-6を見てください。この両方の型が合わさった面を「パーティングライン」と呼びます。ここを基準にして記載する図面寸法は精度がでにくいことを説明しました。


    射出成型のゴム部品や砂型や金型を使用する鋳物部品も全く同じ要領ですので、忘れないでください。


  6. p152からp154:板金編では、とても詳しい「絵辞書」がp88とp89に掲載されていました。樹脂設計は難しいと言われている割には、その絵辞書に相当する資料はp152とp153しかありません。樹脂設計は困難ではないのです

    だだし、p152の図表4-5-4に記載の2行の理解が困難です。それは、以下の①②です。

      【抜き勾配】
        ① 内外壁:片側で2°以下、かつ、材料を増す方向に傾斜する。
        ② 穴:両側で2°以下、かつ、材料を減らす方向に傾斜する。



  7. p154:板金部品の設計も、この後の切削部品の設計も同じなのですが、それは「餅は餅屋と相談」。つまり、「難しい事柄は、自己判断せず専門家に相談しなさい!」ということで、昔からの格言です。


    これが、樹脂設計の難易度1位から除外してくれます。言い換えれば、「餅は餅屋と相談」ができない設計者にとって、樹脂設計はいつまでも設計難易度1位となっていることでしょう。



  8. p155:それでは、「板金編」同様に、今度は50cmのステンレス定規ではなく、樹脂製50cm定規の設計見積りを実施してみましょう。



    「板金編」のステンレス製定規の厚さは1mmでしたが、この「樹脂編」での厚さは3mmに変更しまた。折れてしまうからです。



  9. p155:まず材料費の概算です。
    材料費=体積mm×コスト係数×(1/1000)=(幅35mm×長さ510mm×厚さ3mm)×(0.48+0.12)×(1/1000)=32.1指数(≒円)と概算できます。






  10. p157、p158:材料費が算出できましたら、次に加工費を概算してみましょう。
    課題はロット50,000本ですから、p157の図表4-6-3からロット倍率は「0.84」となります。


    次に月に1,000本とした場合の基準加工費を求めます。板金編ではルート面積でしたが、樹脂編では、その部品の長い寸法を持ってきます。部品の最大長=510mmです。図表4-6-4より、60指数(≒円)と読めます。

    したがって、50,000本のときの加工費=62×ロット倍率=62×0.84=52.1指数(≒円)となります。真上の図表でも確認してください。



  11. p157:セミナーでよく質問がくるのがこのページです。「先生!この図表4-6-3はどうやって作るのですか?」と。まず、貴社とお付き合いのあるA社、B 社、C社、D社という具合に4、5社、つまり、サンプルデータとして4、5点はほしいところです。

    次に、その全社に同一の図面を渡し、ロット10本、100本、200本…1,000本の注文数別で1本当たりの価格の提示を依頼します。これを相見積り、通称、アイミツと呼びます。



  12. p160:「板金編」でも説明したように、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたので、最後は「1本当たりの型費」を算出します。部品の最大長=510mmであり、図表4-6-5から、型費=2,750,000指数(≒円)と読みとれます。したがって、1本当たりの型費=2,750,000/50,000=55指数(≒円)となります。


    ここまでをまとめると、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+52.1+55=139.2指数(≒円)となります。
    板金編での解説では、定価=原価×3ですから、この樹脂製50cm定規の定価=139.2×3=420円となってしまいます。しかし、この定規は、現在も百円ショップで堂々の110円で販売されています。それでは、どうやって、110円で販売できるのかというと、下図はセミナー中に提示した「各国の工賃」です。縦軸は○○円/分です。





    ここで比較してみましょう。設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたね。
    さらに、重要なことは「材料費」とは世界の激戦である「食材」とは異なり、大雑把な表現ですが機械材料費は、世界でほぼ共通なんです。次の「加工費」とは人件費、最後の「型費」もなんと「人件費」なんです。これが設計見積りの世界です。


    ステンレス製の50cm定規の設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費=40.2+3.1+3=46.3指数(≒円)
    樹脂製の50cm定規の設計見積り      =材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+52.1+55=139.2指数(≒円)
    ①②を比較すると、加工費=人件費、型費=人件費と前述しましたので、樹脂製50cm定規を110円で販売するためには、人件費の安い国での生産という案が抽出されます。


    そこで、上記の図表から中国を選択した場合、中国は日本の1/10の人件費ですから、上記②は、
    ②’樹脂製の50cm定規の設計見積り(中国生産=材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+5.2.+5.5=42.8指数(≒円)となり、ステンレス製の設計見積値とほぼ同じ値となりますた。
    つまり、百円ショップで販売されているステンレス定規は日本製樹脂製の定規は中国製と推定できます。


  13. p無し:樹脂部品は安い、安い」と貴社では言っていませんか?それは樹脂材料のことであって、生産台数によってはコスト高になる場合があります。「樹脂部品は安い」は、都市伝説です。