復習のご案内:書籍の第1章:設計見積り(原価/コスト)の知識

  1. p12からp13:当事務所のメイン業務はセミナー講師ではなく、コンサルテーションです。前者は不定期に仕事をいただけるのですが、収入は安定しません。

    一方、後者は契約書を交わしますので収入が安定します。そのコンサルテーションにて、クライアント企業から「低コスト化会議への出席」や「同、指導」を依頼されます。ここで、大変困った方々に遭遇します。


  2. p12からp13:それは、見積りに関して、「原価」「コスト」「定価」「価格」「値段」など、それはもう支離滅裂な単語の混乱となります。そこで、当事務所では低コスト化に関わる単語集を作成しました。
    少なくとも、・・・
    ① 原価とコストの相違
    ② 定価と売値と価格と値段の相違
    ③ 原価見積りと設計見積りも相違

    以上の用語に関する判別がつかなければ、「低コスト化会議」は成立しません。このページをpdf化してスマホに格納して会議中に使用してください。


  3. p23とP24:設計見積りとは・・・
    設計見積り=材料費+加工費+1個当たりの型費
    ・材料費:世界中でほぼ同額(為替レート計算が必要)
    ・加工費:人件費
    ・型費:人件費

    この設計見積りができない日本人設計者は世界中の企業からスカウトされませんし、就職もできません。p24の図表1-2-1の議事録では衝撃を受けたことでしょう。


  4. p27:それでは、期待の「設計見積り」に入ります。
    本セミナーでは百円ショップで販売されている50cm定規の設計見積りを実施しました。それをここで復習してみましょう。

    課題条件は、材質:SUS430、ロット:50,000本の場合とします。目盛りは無視します。型は単発型としてください。設計見積りによる「コスト(原価)」と「型費」を求めてください。
    因みに、・・・設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたね。




    【図表1-3-1】


  5. p無し:それでは解答に入ります。下図をみてください。






  6. p28:まず材料費の概算です。
    材料費=体積mm×コスト係数×(1/1000)=(幅35mm×長さ510mm×厚さ1mm)×2.25×(1/1000)=40.2指数(≒円)という具合に立ちどころに概算できます。

    ここで、受講者様へ質問します。
    入社して1年、3年、5年、10年・・・自分が設計した部品の材料費、自分が製造担当する、自分が調達担当する部品の材料費を算出したことがありますか?もし、無いとしたらそれは大事件ですよ。

    なぜなら、あなたの街中に、そんな寿司屋や蕎麦屋やラーメン屋がいますか?食材費を概算できない経営者がどこにいますか?・・・ということです。


  7. p29からp33:材料費が算出できましたら、次に加工費を概算してみましょう。
    課題はロット50,000本ですから、p29の図表1-3-4からロット倍率は「0.78」となります。

    次に、月に1,000本とした場合の基準加工費を求めます。ルート面積=√(幅35×長さ510)=√17850=133.6となります。図表1-3-6より、課題には「単発型」という条件があるので、4指数(≒円)と読めます。
    したがって、50,000本のときの加工費=4×ロット倍率=4×0.78=3.1指数(≒円)となります。


  8. p29:セミナーでよく質問がくるのがこのページです。「先生!この図表1-3-4はどうやって作るのですか?」と。まず、貴社とお付き合いのあるA社、B 社、C社、D社という具合に4社から5社、つまり、サンプルデータとして4、5点はほしいところです。

    次に、その全社に同一の図面を渡し、ロット10本、100本、200本…1,000本の注文数別で1本当たりの価格の提示を依頼します。これを相見積り、通称、「アイミツ」と呼びます。サンプルポイントが少ないからといって、付き合いのない企業の2社、3社を足しても、統計学の勉強なら意味はあると思いますが、実務には無駄な行為と思います。

    受講者の皆さんも、板金だけでなく、ねじ、ばね、ハーネス(電線)、回路基板、ガラス、レンズなどやり易い部品を一つ選択してトライアルしてみてください。

    この要領でp32の図表1-3-6や、p34の図表1-3-7のデータを作ります。とくに、この型費のデータ作成はやっかいで約1年を費やしました。受講者の皆さん、あの怖い、いかにも職人中の職人である型屋さんをいきなり訪問して、「すみまぜん!この型代はいくらですか?」と質問できますか?大体、門前払いです。

    しかし、何度も門前払いを食らっているとだんだん、こちらも要領を覚え、とっつき憎い先方の型屋も、「あぁ、またお前か!」とちょっとは微笑んでくれます。その後の妙薬は「一升瓶」しかありませんでした(笑)。


  9. p無し:前述したように、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたので、最後は「1本当たりの型費」を算出します。ルート面積=√(幅35×長さ510)=√17850=133.6であり、穴もない単純な形状の50cm定規なので、図表1-3-7から、型費=150,000指数(≒円)と読みとれます。

    したがって、1本当たりの型費=150,000/50,000=3指数(≒円)となります。
    ここまでをまとめると、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費=40.2+3.1+3=46.3指数(≒円)となります。上記の図表でも確認してくださいね。


  10. p無し:ここで余計なお世話ですが、以下を読んでください。
    世間では機械材料の専門書やセミナーが存在していますが、その中身はQ(品質、材料特性)しか教えてくれません。材料のコストの記載があってもせいぜい、「高い、安い」の表現で終わりです。「高い、安い」の知識だけで街中の寿司屋、蕎麦屋、ラーメン屋が経営できるでしょうか?家庭の主婦は「高い、安い」だけで、家計を管理していけるでしょうか?日本で機械材料の情報を教えているのは、当事務所であり、下記の書籍だけです


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  11. p無し:材料費も概算できない日本人設計者!」と、隣国だけでなく、国内からも言われないようにしなければなりません。悔しいですよね!


  12. p39:それでは、「板金編」同様に、今度は50cmのステンレス定規ではなく、樹脂製50cm定規の設計見積りを実施してみましょう。







    「板金編」のステンレス製定規の厚さは1mmでしたが、この「樹脂編」での厚さは3mmに変更しまた。折れてしまうからです。


  13. p40:まず材料費の概算です。
    材料費=体積mm×コスト係数×(1/1000)=(幅35mm×長さ510mm×厚さ3mm)×(0.48+0.12)×(1/1000)=32.1指数(≒円)と概算できます。


  14. p41:材料費が算出できましたら、次に加工費を概算してみましょう。
    課題はロット50,000本ですから、p41の図表1-5-3からロット倍率は「0.84」となります。

    次に月に1,000本とした場合の基準加工費を求めます。板金編ではルート面積でしたが、樹脂編では、その部品の最も長い寸法を持ってきます。部品の最大長=510mmです。図表1-5-4より、60指数(≒円)と読めます。

    したがって、50,000本のときの加工費=62×ロット倍率=62×0.84=52.1指数(≒円)となります。真上の図表でも確認してください。


  15. p43:「板金編」でも説明したように、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたので、最後は「1本当たりの型費」を算出します。部品の最大長=510mmであり、図表1-5-5から、型費=2,750,000指数(≒円)と読みとれます。したがって、1本当たりの型費=2,750,000/50,000=55指数(≒円)となります。

    ここまでをまとめると、設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+52.1+55=139.2指数(≒円)となります。

    板金編での解説では、定価=原価×3ですから、この樹脂製50cm定規の定価=139.2×3≒420円となってしまいます。しかし、この定規は、現在も百円ショップで堂々の100円で販売されています。それでは、どうやって、100円で販売できるのかというと、下図はセミナー中に提示した「各国の工賃」です。縦軸は○○円/分です。




  16. p43:ここで比較してみましょう。設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費・・・が実務式でしたね。
    さらに、重要なことは「材料費」とは世界の激戦である「食材」とは異なり、大雑把な表現ですが機械材料費は、世界でほぼ共通なんです。次の「加工費」とは人件費、最後の「型費」もなんと「人件費」なんです。これが設計見積りの世界です。

    ステンレス製の50cm定規の設計見積り=材料費+加工費+1本当たりの型費=40.2+3.1+3=46.3指数(≒円)
    樹脂製の50cm定規の設計見積り      =材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+52.1+55=139.2指数(≒円)

    ①②を比較すると、加工費=人件費、型費=人件費と前述しましたので、樹脂製50cm定規を110円で販売するためには、人件費の安い国での生産という案が抽出されます。
    そこで、上記の図表から中国を選択した場合、中国は日本の1/10の人件費ですから、上記②は、
    ②’樹脂製の50cm定規の設計見積り(中国生産=材料費+加工費+1本当たりの型費=32.1+5.2.+5.5=42.8指数(≒円)となり、ステンレス製の設計見積値とほぼ同じ値となりますた。

    つまり、百円ショップで販売されているステンレス定規は日本製樹脂製の定規は中国製と推定できます。


  17. p49:樹脂部品は安い、安い」と貴社では言っていませんか?それは樹脂材料のことであって、生産台数によってはコスト高になる場合があります。「樹脂部品は安い」は、都市伝説です。
    図表1-7-1は、設計者として知るべき重要な情報です。