【質問-18
私は商業高校卒で、消費者金融のキーオペレータとして勤務していました。しかし、リストラ対象となり、現在は、設計派遣会社に転職しています。キーイン能力の前職経験を生かし、3次元CADのオペレータ、つまり、設計者が3次元CADで設計したモデリングを図面に落とすトレーサーを担当しています。
今後、設計職を望んでいますが、機械設計とは、とてつもなく難しい職業でしょうか?また、どのようなステップを踏んでいけばよいでしょうか?

【回答-18】
料理の学問と言えば、大きな括り(くくり)では化学であり、次に食品化学や調理学となるでしょう。そして、最終的には色彩工学も必要でしょう。
しかし、料理とは学問の前に辛い修行があり、実務が優先されます。実務優先ということは、努力や才能が優先されますが学歴は問われません。実は、機械設計も学者になりたい人は別ですが、設計職人になりたい場合なら、前述の料理人とまったく同じです。
しかも、料理よりも簡単です。なぜなら、機械設計には辛い「修行」がないからです。

「機械設計には辛い修行がない」・・・ 少々誤解を生む回答から始まりました。
今回は設計職人の「修行」について解説したいと思います。寿司屋や大工の世界では、その親方が弟子を「修行」という長くて辛い基本を経験させ、日々、厳しく指導しています。


たとえば、寿司職人といえば、「飯炊き3年握り8年」という言葉がある通り、修行は11年以上もかかり、接客法も含めれば20年以上とも言われています


一方、機械設計者の場合、その辛い修行がありません。
その証拠に、新人から「いきなり製図」です。なんて単純な職業なのでしょうか?本当に簡単で単純な職業なのでしょうか?

1.なぜ、機械設計が料理よりやさしいのか?

まず、「なぜ、機械設計が料理よりやさしいのか?」を考えてみましょう。図表18-1は当事務所のクライアント企業内で議論した「料理人と設計者の相違」です。



【図表18-1】


部分的に筆者も異論がありますが、料理人より楽に見えるのは確かなようです。いくら「機械設計が料理よりもやさしい」といっても、図表18-1には、「前の図面を写しとるだけ」や「死亡事故や手足切断でも社長が謝るだけ」や「社告・リコールを隠す企業が存在」など、誤解を招く表現があります。


もちろん、あってはならないことで、筆者もこのクライアントには疑問を感じます。しかし、この企業の実態を物語っているのかもしれません。


さて、本題に戻りましょう。
「商業高校卒 ⇒ 消費者金融に勤務 ⇒ 設計派遣企業に転職 ⇒ トレーサー ⇒ 機械設計」・・・このステップでは無理です。確かに、機械設計は料理よりやさしいのですが、単純に「やさしい」や「簡単」という訳ではありません。