【質問-2】
私は、入社4年目の技術者で、ある機械装置の設計を担当しています。
当社の製品は、その製品仕様から始まるお客様との打ち合わせが多いのが特徴です。
何度も経験しているはずなのに、未だにお客様からは「結局、何が言いたいの?」とか、説明中に何度も聞き返されます。
どのようにしたら、説明や打ち合わせがうまくなれるのでしょうか?

【回答-2】
この悩みの解決方法は簡単です。
前回お知らせした技術者向けのコミュニケーション道具、そのスキルを磨けば解決します。
解決方法は簡単と前述しましたが、解決には少々時間がかかります。
それは、場数を踏むことの時間です。経験の回数が必要です。その覚悟だけは準備しておいてください。

1.技術者専用:7個のコミュニケーション道具とは

  • 以降は、図表1-1に記載される技術者必携の「技術者向けコミュニケーション能力を向上させる道具達」を、ひとつ一つ詳細に解説します。

  • ただし、今回は図表1-1の「ラポール」と「6W2H」と「比喩(ひゆ)」の3つです。残りは次回となります。

図表1-1

1-1.ラポール(目的の共有)

  • いきなり本題に入って相手を説得するのではなく、その前段として共有できる話題や会話が必要です。ただし、大阪人には不要です。なぜなら、生まれつきこの道具を有しているからです。とても羨ましく思います。

  • たとえば、お金を借りたいとき・・・。「儲かってまっか?」「あかん、さっぱりや!」「さよか、ウチもあかんねん。ほんでなぁ・・・」と、ここまでラポール(共有)を図り、次に借金の本題に入ります。このたった3行の会話で、相手との共有が図られるのです

  • さらに、大阪のおばちゃんは強力な武器を持っています。その武器とは、「飴ちゃん(あめちゃん)」。筆者は、この「飴ちゃん」を新幹線の社内で頂戴したおかげで、東京、大阪間の2時間半、喋り通しの地獄を2度も経験しました。
  • また、「トラブル撲滅チーム」や「低コスト化チーム」を結成するとき、共有が得られないメンバーはチームから外すことがリーダーシップのひとつです。厳しいですか?

1-2.技術者必携中の必携:6W2H

  • 義務教育で教わったのが5W1H。そこに「Whom」と「How Much」が加わり、「技術者の6W2H」という道具が存在します。これは、國井技術士設計事務所の商標登録であり、コンサルテーションメニューのひとつです。

  • 早速ですが、図表1-2を見てみましょう。これは毎年3月には売り切れてしまう人気の「手動式鉛筆削り器」です。

図表1-2

  • これを見たこともない人に説明しようとすると、「鉛筆を〇〇から差し込み、ハンドルを回して~」と思いつきで説明します。思いつきの説明ですから、反復できません。

  • そこで登場するのが、図表1-3に示す「技術者の6W2H」です。
    【図表1-3】
  • この手動式鉛筆削り器を人に説明する場合の必要最小限の情報が含まれています。当事務所のクライアント企業では、トラブルに関するお客様への説明や、その逆利用として、トラブルの説明を受けるときの漏れ無きチェックリストとしての活用を義務付けています。
  • したがって、「がんばります」とか「一層の努力で云々」という気合いや概念だけの対策報告は皆無です。
  • 専門性が高まった現在、同業者同士でも相互に理解が深まらない場合が多々あります。技術者のコミュニケーションやプレゼンとは、図表を提示しないと理解されません
    また、「たとえば」を連発して、身の回りの事象に置き換え、ブレークダウンして解説することが重要な手段です。

  • 後者の事例として、・・・「安心して飲料できる水道水ですが、そこ含まれるカルキ(塩素)は、強力な酸化剤です。水分が蒸発した後の水道水は、この強酸によって金属を腐食させる場合があります。たとえば、加湿器の場合、~」と言う具合です。
    さて、前者の図表とは何でしょうか? 次の図表1-4がその回答です。
    【図表1-4】
  • ここに記載される7つの図表名を「QC7つ道具」と言います。筆者はこれらのひとつ一つを解説する気にはなれません。なぜなら、7つの内なんと、5つもが小中学校で習っているからです。
  • ここで自己研鑽(じこけんさん)の課題が、二つ抽出されました。以下に示します。前述の図表をエクセルで即座に作成できること。学校では教わらない、技術者必携の「5.特性要因図」の活用です。
  • 次回は、学校では教わらない、企業では間違いだらけの「特性要因図」を解説します。
  • お楽しみに。

おつかれ様でした。また、お会いしましょう!