【質問-22】
私は、東京下町の中小企業に勤務する技術者です。
今、設計の効率化に悩んでいますが、専門書や技術セミナーの案内を閲覧すると、QFDや品質工学、超複雑FMEAや難関TRIZなど、当社ではあまり関係のない設計ツールの氾濫で社内でも混乱状態です。前述のような大企業に偏った設計の効率化や大企業向けの設計ツールではなく、我々中小・零細企業向けの設計効率化をご指導ください。

  【回答-22】
近年、この手の質問が増加しています。開発手法などの専門書やセミナーは、自動車や自動車部品、重電や重機などの大企業に偏った内容が氾濫し、若手技術者にも混乱を招いているようです
埼玉県川口市の設計職人であり、設計コンサルタントで生計を立てている筆者でも、難関ツールに閉口しています。
本コラムは、中小・零細企業向けの設計効率化と必要最小限の設計ツールを紹介しましょう。

  • 痛い所を突かれた気がします。確かに、設計ツールの専門書や、各種のセミナーは、大企業に偏った内容と事例で満載です。これを知った中小・零細企業の技術者や経営者は、劣等感に苛(さい)まれ、「あの有名な大企業が使用している設計ツールだから我々もどうにか導入したい」と焦ります。
  • よくもこのような多種で難関な設計ツールを使い分けできるものだと、筆者も感心しています。
  • 有効な設計ツールが数多く存在しますが、中には「百害あって一利なし」の設計ツールも存在します。したがって、貴社で導入している設計ツールを、一度、オールリセットしてみましょう。

1.設計ツールの氾濫にうんざり!

  • 今、専門書や技術セミナーの案内を閲覧すると、QFDや実験計画法、品質工学や超複雑怪奇FMEA、3次元CADやCAE、VEやTRIZなど、中小・零細企業ではあまり関係のない設計ツールが氾濫しています
    ① 複雑怪奇な自動車系のガラパゴスFMEA
    ② 同、設計審査システム
    ③ なぜなぜ問答
    ④ 見える化、見える化でバカになった日本人技術者
    ⑤ 複雑怪奇なQFD
    ⑥ なんでもかんでも品質工学(当事務所では低コスト化で必要)
    ⑦ 根性、精神論のTQM
    ⑧ ポンチ絵コミュニケーション
    ⑨ 根性のVE
    ⓾ 超難関のTRIZ
    ⑪ なんでもかんでもCAE
    ⑫ 原価計算
  • 一度、すべてを捨ててみませんか?そして、本当に必要な設計ツールのみ「取捨選択」しましょう。
  • 目に余る設計ツールの氾濫は、新人の設計者を大いに悩ませます。この先、中小・零細企業の設計者に絞った必要最小限の設計ツールを解説します。

2.道具を使えなければ職人ではない

  • 設計ツールの前に、その真逆のことをお話しします。それは、全くツールが使えない技術者です。設計コンサルタントの筆者を困惑させる設計者は、「道具なき設計者」です。「こんなもんだろ、あんなもんだろ」と感覚的に造形する設計者です。
  • とくに日本企業では2001年から出現してきました。
    3次元CADの画面では、製造不可能、組み立て不可能な部品や信頼性の低い商品が次々と設計されています。いや、設計ではありません。造形(モデリング)です。設計者ではありません、3次元モデラーの出現です。ある企業では、彼らを「カンジニア」とも呼んでいました。

  • これらを払拭するための一手段として、設計職人には設計ツールが必要です。設計コンサルタントとして、筆者が考える最も基本的、かつ、近代的な設計ツールを図表22-1に記載しました。習得するのに時間がかかるツールもありますが、たったの11個です。




    【図表22-1】
  • 料理人だけでなく、大工も、そしてその仲間の土建屋、瓦(かわら)職人、左官屋のすべての職人は道具を使えて一人前となります。「神の手を持つ外科医」というテレビ番組がありましたが、この医者も自分で考案した特殊な鉗子(かんし)を用いて、世界一の脳外科手術を施していました。
  • この後、最も重要な設計ツールである3次元CADとCAEに絞って解説します。