【質問-4】
彼女いない歴32年の生産技術者です。社内では内弁慶とか、口下手とか言われ、どちらかと言えば根暗のヒッキー君です。
第1回の図表1-2「技術者向けコミュニケーション能力を向上させる道具達」を見て驚きました。技術者のコミュニケーション力には、6個の道具があるのですね。
諦めかけていたコミュニケーション力ですが、今から自己研鑽(じこけんさん)に励んでいます。もしかして、彼女ができる道具としても役立ちますよね?

  【回答-4】
まずは、ヒッキー君から卒業しましょう。そのために、休日は語学教室、エクササイズ、スイミング、南国島ツアーなどのクラブに入会しましょう。自己投資ですね。そのクラブでは、第2回で伝授した「ラポール」が役に立ちますよ。まずは、相手との共通点を探します。探さなくても、「語学教室」、「エクササイズ」、「スイミング」、「南国島ツアー」・・・この単語自体が、既にラポールですよね。したがって、この単語を使って、コミュニケーションを取りましょう。相手が女性なら、勇気を出して話しかけましょう。初めからうまくいく人などいませんよ。

1.恋人をゲットするための技術者向けコミュニケーション

手元に第1回の図表1-2を準備、参照してください。
現在、連載で技術者必携の「技術者向けコミュニケーション能力を向上させる道具達」をひとつ一つ解説していますが、彼氏や彼女を作りたい目的で、この道具たちを使用すると、ちょっと堅苦しいかもしれません。たとえば、6W2Hです。
「だれが(Who)だれの(Whom)のために、なぜ(Why)デート(What)を~」のメモ片手に彼女とディズニーランドへ行ったら、すぐに、「キモイ!」と言われ、彼女が帰宅してしまうでしょう。

しかし、その他の道具、たとえば、前述のラポールなどは役に立つかもしれませんね。少なくとも大阪のおばちゃんの強力な武器である「飴ちゃん」に相当するものは持参しましょう。
そしれて今回は、もっと役に立つ残り3つのコミュニケーション道具を紹介します。是非、有効活用して職場だけでなく、「彼女いない歴32年」を脱してください。

2.事前に先を推定しておくPDPC

過程決定計画図(Process Decision Program Chart)、これをPDPCと呼びます。このツールは、かつて過激な行動の学生運動に悩む東京大学の近藤次郎博士によって発案されました。学生運動の沈静化や「よど号事件」と呼ばれるハイジャック(テロ事件)で活用されました。早速、Webチェックしてみてください。
さて、そのPDPCとは一体何かというと、項目のタイトルそのもので、「事前に推定しておく」ことです。何を推定しておくのか?それは、「工程」、「過程」、「道順」、「イベント」などです。新人設計者にとって、毎日が興味ある仕事や、楽しみな仕事であるはずがありません。
場合によっては、お客様のところへトラブル報告のために出張しなくてはならない場合があります。トラブル原因や再発防止策や生産開始日などの報告をする際、あなたは、お客様側の何の情報もなく、行き当たりばったりでそのお客様を訪問しますか?
そのようなときに、必須であるツールが図表4-1に示すPDPCです。
【図表4-1】
以降は、図表4-1の中でも重要な②③を解説します。

②  お客様出席者の分類:出張目的を達成するためには、少なくとも、出席者の部門名と人数の情報は入手したい。図中②のデータからは、当日の報告は、「品証系」、「生産系」が主体となると予測される。
出席者は何を知りたいのか:上記②より、説明会の「重し付け」を設定する。重し付けとは優先順位のことであり、それに基づく時間配分や資料ページの配分を設定することである。

PDPC・・・呼称は難しいかもしれませんが、先人達がよく口にしていた格言ではないでしょうか?たとえば、スポーツ選手や将棋士や雀士(麻雀のプロ)なら「先を読め!」と言われるのかもしれません。
彼女いない歴32年の初デートなら、「どこに行きますか?」とか「何を食べますか?」などいちいち彼女に聞くのではなく、2、3の選択肢を含んだPDPCがあっても良いと思います。初回から男性らしいリーディングができるかもしれませんね。
一方、女性の場合、今の時代なら女性がリーディングしてもOKだと思います。やさしく「範」を彼に示してあげてください。ただし、1、2回が限度かも。

3秒ルールはリズミカルな会話に必須のツール

設計審査、デザインレビューはどうやればいいのですか?・・・これは当事務所に入るドル箱のコンサルテーションです。設計審査に必要な審査対象物や準備期間、質問の要や承認と却下の判断基準などを指導します。
しかし、ほぼすべてのクライアント企業で大きな壁にぶち当たります。それは、「お通夜の設計審査会」です。
設計審査とは、「Q&A(質問と回答)」の繰り返しです。質問側と回答側の歯車が噛み合ってはじめて円滑に進行していきます。堅苦しい審査なのに、相互に気持ちのよい感覚に浸ることができます。しかし、どちらか一方が「ダンマリ」を決め込めば、もうギクシャク感でいっぱいです。
実は、多くの日本企業が後者のパターンです。
その原因が、コミュニケプレゼンスキルにあったのです。さらに、突き詰めると「3秒ルール」の違反でした。
人と人の円滑化会話やコミュニケーションとは「3秒以内」にQ&Aが繰り返されて成立するものです。むしろ、最近は「1秒以内」というクライアント企業も存在しています。せっかちですね。
彼女(彼氏)いない歴32年の初デートなら、会話は「3秒ルール」を死守しましょう。これが途切れると、沈黙の初デートとなります。きっと彼女(彼氏)は思うでしょう「あぁ、つまらないデートだったわ(よ)!」と。

4.コンセンサス:同意を得ながら業務を進行させる

外資系企業に勤務する技術者から、以下の情報を収集しました。アメリカの企業との技術打合せ、そして、相互コンセンサスを取るための会議体を「Work Shop(ワーク・ショップ)」と呼びます。会議に出席したアメリカ人技術者から、何度も注意を受けることは、・・・
① 日本人技術者は、コンセンサスをとろうとしない。
② 日本人技術者は、身勝手な行動を取る。
③ 日本人技術者は、実はコンセンサスが取れない!
④ 日本人技術者は「No!」と言いたいのに何でも「Yes!」
⑤ 日本人技術者は「Yes!」と言ったのにその後の行動なし。

と、言います。最近は、韓国や中国人の技術者からも指摘されています。
上記の原因は、英語ができないから、といわれるかもしれませんが、語学は第2原因です。第1の原因は、コンセンサスをとろうとしない社会とその慣習、および、教育の欠如です。

さて、前記のコンセンサスとは、「同意」のことです。昔の上司は大変男らしく、「いいからオレに黙ってついてこい!」とか、「つべこべ言わずにさっさとやれ!」などと、部下に対して「同意」を得ずに、単なる命令で業務を進めていました。
しかし、近年は、セクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)など、人間社会でのルールが厳格になったことで、前記のタイプの上司は、少なくとも技術系では消えました。
彼女いない歴32年の初デートなら、PDPCで先手を打つのもお勧めですが、あまり強引に進めると彼女もうんざり!やはり、彼女へのコンセンサスが必要でしょう。
女性の場合も同じです。いくら主体性のない彼氏でも「ねぇ、これでいいかしら?」の一言は忘れずに!「うん」しか言わないその彼氏でも、いつまでもそのコンセンサスを覚えていますよ。ご安心ください。
技術者向けコミュニケーションの道具の解説はこれで終了。次回は、技術者向けパワーポイントの作り方を伝授します。お楽しみに!

おつかれ様でした。また、お会いしましょう!