【質問-3】
前回(第2回)では、QC7つ道具が出てきました。7つの内の5つが小中学校で学んだ道具とはあらためて驚き、義務教育ってすばらしいと思いました。
一方、ちょっと恥ずかしいのですが、特性要因図って何ですか?確かに学校では習っていません。それから、「新QC7つ道具」っていうのもWeb上で見つけました。これって必要でしょうか?

【回答-3】
5W1Hもそうですが、日本の義務教育はすばらしいですね。しかし、学校で教わったことを実務でどう生かすは、少々の壁があるようです。学問と実務の違いですね。いずれにしても、前述の5つの道具はエクセルを使用して、即刻、グラフ化できることが社会人。つまり、技術者ですよ。次ぎに、新QC7つ道具ですが、否定はしませんが、とくに必要はありません。道具ばかりが存在すると必ず言われますよ、「宝の持ち腐れ」と。基本形のQC7つ道具、そして、それらをエクセルで一気に作成できる実務ノウハウを、まずはしっかりと身に着けてください。

1.自己研鑽とは

  • 第2回で抽出された自己研鑽(じこけんさん)の課題は以下の二つでした。覚えていますか?
    ① QC7つ道具の各種図表をエクセルで即座に作成できること。
    ② 学校では教わらない、技術者必携の「特性要因図」の活用です。

    前記①は、エクセル操作が主役となるので、これ以上の解説は省略します。少なくとも、有料セミナーや社内教育で取り上げるレベルの課題ではありません。自己研鑽(じこけんさん)のレベルです。理解できない場合は、仲間同士で教え合いましょう!教え合う?・・・そうです!「技術者としてのスタートは技術ではなく、コミュニケーション力(第1回に記載)」なのですから。
    一方、間違いだらけの特性要因図が世の中に蔓延していますので、ここでは基本形を伝授しておきます。特性要因図は、学校では教わらない、技術者必携の道具です。

2.技術者必携の特性要因図とは(間違いだらけの使い方を正す)

  • 図表3-1に示す特性要因図は、「魚の骨」とか「フィッシュボーン」などと言う場合がありますが、論文や壇上での発表の場合は「特性要因図」の用語を使うことが無難です。
    【図表3-1】

3.1次要因は4Mで切れ!

  • 図表3-1の特性要因図に記載されている1次要因を見てください。すべて4Mで切られています。その4Mとは、・・・
    ① Man(人)
    ② Machine(機械)
    ③ Material(材料)
    ④ Method(方法)をいいます。
  • つまり、生産の要素をまとめたものです。
    言い換えると、すべてのトラブルは4Mに潜在すると言っても過言ではありません。ある企業が作成した1次要因に、「DC電源/AC電源」、「国内生産/海外生産」などが書かれた特性要因図を拝見しましたが、見るに堪えられませんでした。何故なら、1次要因の出所が不明確であり、まるで思いつきのアドリブです。
    しかし、4Mで切った後に「DC電源/AC電源」、「国内生産/海外生産」の1次要因に絞ったのであれば納得がいきます。ここは多くの方が誤解しています。その誤解者の一人が、なんと若き日の私(筆者)でした。
  • ここで「Man」に注目してください。
    ここが「ヒューマン・エラー」と呼ぶ箇所です。恐らく、2018年からISOで厳しく審査される部分です。現時点で各企業の準備が既に整っていなければ、ISO審査に間に合わないかもしれません。当事務所のクライアント企業では、焦りまくった末、昨年の11月で準備万端です。あなたの企業は大丈夫ですか?

4.4Mで不足の場合は4M2Sで切れ!

  •  単純な商品や部品の場合は、4Mで切れば十分なのですが、複雑な商品、たとえば「○○システム」などと呼ぶ商品や部品の場合は4Mでは不足であり、「4M2S」に代替します。
    そこで、図表3-2に示す4Mの「Method」に、「System(システム)」と「Space(空間)」が付随した「4M2Sで切る」ことになります。
    【図表3-2】

ただし、この図表の場合は、技術資料や論文の図形データとしては、見にくいことや、記載スペースを使うので、実用としては、図表3-3のような形態で使用されている場合もあります。


【図表3-3】

当事務所のクライアント企業に製缶企業があります。製缶といっても缶コーヒーの缶やペットボトルも設計/生産しています。缶もペットボルトも部品点数はたったの2、3点ですから、設計トラブルは「4M」で十分です。しかし、缶とペットボトルの自動生産機ラインに関するトラブルは、「4M2S」で深掘りする必要があります。

5.特性要因図:間違いだらけの使い方を正そう!

図表3-1、図表3-2、図表3-3における特性(魚の頭)の下に「バラツキを展開する」という注意書きがあります。ここに注目しましょう。特性要因図の作成時、トラブルの「原因」をなぜ、なぜ、なぜの「なぜなぜ問答」で深掘りするとのことで、特性の左側にトラブルの「原因」を羅列する人がいますが、これは誤解です。ここには、正常品(良い子)とトラブル品(悪い子)の差、またはバラツキの「要因」を記載します。これを「良い子悪い子のバラツキ」と言います。

  一体、なにが違うのでしょう?

  • たとえば、図表3-4の右下は、「職場が暗い」の原因を追究した結果、高齢者全員をリストラし、その次は中年層という対策に収束しがちです。しかし、左上の場合、暗い職場と明るい職場を差の要因を追求した結果、年齢別に最適な人員配置という対策となり、さらには男女比や日本人と外国人の最適な比率まで対策案として浮上します。特性要因図は多くの方がここを誤解しています
  • その誤解者の一人が若き日の私(筆者)でした。人は歳をとると口うるさくなってきます。筆者は、特性要因図のあれはダメ、これもダメとはいいません。しかし、基本形は熟知しておきましょう。次回は、残りの道具である「PDPC」、「3秒ルール」、「コンセンサス」の道具を解説します。ご期待ください。

おつかれ様でした。また、お会いしましょう!