【質問-20】
私は某有名国立大学・工学部機械系の院卒で、工作機械企業に就職して、やっと1年半が経ちました。國井先生のこのコラムは、新人の私にはとてもタイムリーで毎回の記事を楽しみにしています。そこで相談です。学校は首席で卒業しましたが、学生と社会人の差をつくづく感じています。とくに、ショックだったのは、昨年の忘年会の席で「オイ!図面読めない、描けないの院卒!」と言われました。当たっているだけに、とてもショックです。これから先、どのように設計実務を勉強したらよいでしょか?

  【回答-20】
前々回の18回では、「商業高校卒 ⇒ 消費者金融に勤務 ⇒ 設計派遣企業に転職 ⇒ トレーサー ⇒ 機械設計」・・・このステップで歩もうとする女性設計者の悩みに答えました。今回は真逆のケースですね。つまり、高学歴であり、かつ、機械系の院卒設計者です。なんと、飲み会とはいえ、「図面読めない、描けない」と職場の仲間から言われたのでは大きなショックを受けたことでしょう。その解決法はひとつしかありません。答えは「修行」です。しかし、どのような優先順位で修行を積めばよいのかが不明です。今回は、それをご案内しましょう。

  • 近年の日本経済は豊かになり、また、教育熱も上昇し続けています。かつては、中卒や高卒による「集団就職」という単語も今や、死後になりつつありますね。
    そして、今や職場では大卒が溢れるどころか、院卒の新人も多くみられるようになりました。
  • 設計コンサルタントとして、企業が抱える悩みを調査すると、驚愕する事実に遭遇します。最近よく耳にするのが、「図面読めない、描けない院卒」です。もちろん、院卒に限らず、工業高校卒も大卒も同じです
  • ある国立大学教授に尋ねると、「大学は学問を学ぶ所であり、実務は教えていない」と言っては憚らない(はばからない)先生がいます。理解できますが、学生の立場からは少々さびしい気がしませんか?

1.自己の技術コンピテンシーをソフトで診断

  • 前回の19回でも解説しました。それは、・・・
    設計者として、自身のコンピテンシーを把握しないまま10年や20年が過ぎると、いつのまにか、自分が一番と思うようになってきます。そして、設計法が「我流のオレ流」となり「井の中の蛙」になっていきます。ここは、押さえるべきポイントです。
  • したがって、新人設計者のうちに自己の技術コンピテンシーを把握する必要があります。一年おきで十分ですから、コンピテンシー評価の更新が必要です
  • そして、毎年、自己のコンピテンシー評価を終えた後は、必ず、コンピテンシーモデルを更新します。この行為なしに、技術者としての成長はありません。
  • ここまでの単語がわからない人は、第19回を読み直してください。
  • さらに第19回では、下記の國井技術士設計事務所のホームページから、「技術コンピテンシー自己診断ツール」をダウンロードして、自己診断の実施をお願いしました。いかがでしたか?

【URL】    http://a-design-office.com/somesoft.html
【ソフト名】  No.25:設計力養成ギブスの各種ツール類
【パスワード】frs_power

  • あなたの結果に愕然(がくぜん)としませんでしたか?それは、学校では「学問」を学びましたが、実務を学んでいないからです


2.技術コンピテンシーの結果と目標の設定

  • 技術コンピテンシー自己診断ツールの結果、つまり、「コンピテンシー評価」はいかがでしたか? この下の 図表20-1の右欄に示す「技術コンピテンシーモデル(目標値)」と比較しましょう
  • かなりの低い点数に愕然としているかもしれませんが、大丈夫です。新人設計者のあなたは、ここからがスタートです。本コラムに期待してください。
    または、当事務所のホームページから質問してください。
  • とくに、卒業したばかりの新人設計者の技術コンピテンシーは、「0(ゼロ)点」だったのではないでしょうか?  なぜでしょうか?  答えは簡単です。学校では、製図のカリキュラムは存在していますが、設計の実務カリキュラムがないからです
  • 企業の設計職を目指す新人設計者として、この時点で、院卒や大卒や高卒などの学歴は一切無用であることを理解してください。