【質問-16】
第8回のコラム、「お通夜のデザインレビューよ、さらば」の記事を職場の仲間とともに何度も読みました。感銘を受けたので、早速、円陣を組んだ形式のデザインレビューを開催しました。 斜め後ろを振りむけば、参加者全員の顔が見えて、確かにデザインレビューが活性化しました。 しかし、相変わらずの「お通夜」です。どうしたら、良いでしょうか?
【回答-16】
この企業様は、当事務所の2年前のクライアント企業様です。
契約が切れた今も、何度か相談メールが来るので、先月にこの企業を再訪問しました。 お通夜の原因究明は容易でした。
それは、・・・
それは、がんじがらめのデザインレビュー・システムを構築していました。この企業の設計部と品質保証部が協業で独自に作成し、「デザインレビュー・ガイド」と呼んでいました。
それはまるで、設計者に拷問をかけるような、また、警察で犯人に対して、「これでもか!これでもか!」と書かせる調書のようでした。これでは、お通夜は当たり前。
1.真のデザインレビューを6W2Hで分析する
本コラムの第2回では、「技術者のコミュニケーション道具」と題して、6個の道具を紹介しました。その中でも、筆者が最重要として指導しているのが、「6W2H」です。
新人設計者の皆さん!覚えていますか?利用していますか?
当事務所のクライアント企業が、前述の6W2Hを応用してデザインレビューの意義を分析したのが図表16-1です。
図表16-1 デザインレビューの意義を6W2Hで分析
注目すべきは、「What」と「How」。
まずは、「What」ですが、設計書を審査するのが、設計審査、つまり、デザインレビューです。本コラムの第14回「スカウトされない日本設計者」の記事の中で、「設計書がない、設計書が書けない、設計書がない設計審査?」では大きな衝撃を受けたことでしょう。
がんじがらめのデザインレビュー・システムでは、図表16ー2のように、「あれも、これも」と審査資料を準備させますが、当事務所のクライアント企業では、簡易設計書(DQD)のたった一本です。
【図表16ー2】
複雑化したDRは、「百害あって一利なし」。
その証拠に日本の自動車企業、および、その関連企業からは、毎月が「ビッグ・リコール」や「メガ・リコール」を発生しています。
これでは、若手設計者はたまったものではありませんね。
次に、「How」ですが、赤ボールド文字に注目してください。楽しくなければ、継続しません。がんじがらめにデザインレビューでは、お通夜になるのは当たり前。
図表16-1をもう一度みると、デザインレビューをがんじがらめにする必要性が見当たりませんよね。
2.お通夜のデザインレビューの第二の要因
当事務所のクライアント企業で、図表16-1に基づく、楽しくて、興味が湧き、継続性のあるデザインレビュー・システムを構築した後も、「お通夜のデザインレビュー」は解消しませんでした。その要因究明も簡単でした。
その企業では、年間を通して技術者が人前に出て、または、壇上で発表する機会が皆無だったのです。このような環境下で、ただでさえ無口な技術者が、活性化したデザインレビューなどは不可能。お通夜は当り前の環境です。
そこで対策されたのが、「失敗事例発表会」の開催です。 言い換えると、失敗事例発表会は、お通夜のデザインレビューの最終策でした。