2.事例:接着企業の係長が自動車企業の品質管理部長へ謝罪する
それでは、役者の岸田係長と菅部長に登場していただきます。
岸田係長は、接着剤のメーカーに勤務する係長クラスの研究員、菅部長はあの有名な自動車会社T社の品質管理部長です。
この度、接着剥がれのトラブルが生じ、その接着剤を開発した研究員の岸田係長と営業マンが、菅部長の品質部門への謝罪と今後の対応に関して面談に出向きました。
(入室と同時にキーマンを捜す。中央に座る菅部長がキーマンと推定した)
(菅部長にアイコンコンタクトする)
こんにちは!大変ご迷惑をお掛けしています!(←これが第一回目のラポール)
株式会社ADOの研究員、岸田と申します。
やぁ、遠路すまんなぁ、部長の菅です。
まぁ、そこに座ってください。
(キーマンである菅部長のネクタイの結び目に目線を置く)
改めまして、ご迷惑をおかけしております、株式会社ADOの研究員、岸田と申します。実は、・・・。
実は、今回のトラブルはT社様と同業のH社でも発生しており、原因は、当社側と推定しております。(←ここが第二回目のラポールです)
そうだろ、そうだろ!
(なぜか、いきなりご機嫌になった菅部長です)
前述の第二回目のラポールに関してですが、もちろん、技術者ゆえに捏造(ねつぞう)や虚実やお世辞は禁物ですが、「同業のH社もトラブル」というセンテンスで、菅部長一派と岸田係長の全員にラポールが取れたことになります。
3.面接試験はラポールで始まりラポールで終わる
今度は、シーンが一変します。
筆者はある国家試験の試験問題作成、および、面接試験官を請け負っています。後者の面接時に、何度か不器用な受験者に遭遇します。
再び、役者ので受験者の岸田君と面接官の菅さんに登場してもらいましょう。
この化合物はですね、Aを触媒として使用するときのみに生成する化合物ということですかねぇ?
そんなこと言っていません。全く違いますよ。
もう一度説明しますが、・・・
試験官の菅さんは、受験者岸田君の回答にラポールを求めています。それなのに、岸田君はそれを外してしまいました。折角のチャンスを自ら破棄してしまったのです。残念な事例です。
面接は、あなたのためにあるのではなく、「試験官のための面接試験」であることの基本が欠如していますね。
それでは、次の事例はどうでしょうか?
この化合物はですね、Aを触媒として使用するときのみに生成する化合物ということですかねぇ?
申し訳ありません。私の説明が悪かったようです。
実は、・・・
または、次にように回答します。
概ねその通りです。しかし、一箇所だけは、・・・
試験官の菅さんは、受験者の回答にラポールを求めています。それに対して、受験生の岸田君もラポールで返そうと気遣っています。
前述、「試験官のための面接試験」と解説しましたが、その意味を理解できましたか?
「試験官のための面接試験」とは、あなたが面接試験官だったらどう思うか、立場を逆にして、または、相手の立場で考えてみようという意味です。
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おつかれ様でした。また、お会いしましょう!