2.機械設計者の修行とは
それでは、図表18-1を払拭するための、設計者にとっての修行とは何かを考えて行きましょう。
図表18-2は本コラムの第1回で掲載した技術者のピラミッドです。入社式では、社長から図中左側の訓示を頂いたかと思います。また、皆さんもそれに沿った大きな志(こころざし)を描いたことでしょう。
しかし、今は若干異なります。図中右側が重要なのです。注目すべきは、技術者の初めと終わりに位置するのが「コミュニケーション能力」です。技術者の頂点は技術ではなく、コミュニケーション能力です。
【図表18-2】
つまり、技術者の修行の一つがコミュニケーション能力であり、技術者一生に渡る修行です。実は、寿司職人と同じではないでしょうか?
3.真の心得の習得を目指す修行とは
設計者とは、少なくとも学者ではありません。職人です。料理人や大工を代表に、新前の職人はその職業の心得を長い年月の修行で習得します。
たとえば、ホテルの料理人など、厳しい修行に耐えきれず、半数以上が一年以内で厨房を去ると言われています。それほど、重要な職人への過程です。また、職人とは「道具」を使いこなして一人前と言われますが、日本人設計者に道具はありません。たとえば、低コスト化設計には、少なくとも七つの道具が存在しています。
それらは、「VE」、「QFD」、「品質工学」、「TRIZ」、「標準化」、「モンテカルロシミュレーション」、「コストバランス法」の七つです。
しかし、ほとんどの企業で、何一つとして採用されていません。
一方、筆者は、ある大手企業の「技術者育成会議」に出席しました。その企業も、日本のある大手企業からはじまった「成果主義」を導入していましたが案の定、ゆがんだ制度に変貌していました。その代表的な負の現象は、・・・
出 生 逃 げ
自分の部下を育成せず、自分だけが昇進すればよいと考える技術者が増加したことです。
そして、この延長線上に技術の衰退がありました。若手技術者の育成は、社内外のセミナーへお預け。まるで、宅配弁当のようです。
気がつけば料理の手順を忘れ、料理の道具がなくなり、食器すらなくなり、やがては言語も消失していました。しかし、日本企業がこのような状況を放置するはずがありません。
そこで、その企業と当事務所で打ち出した新人設計者向けの「心得」が、本コラムに関する次のテーマです。
「心得」のすべてを満たすことはできないと思いますが、ここから、隣国の工業界に対してのリベンジを開始することを相互に誓いました。
【図表18-3】
本コラムでは、上記①は第1回から始まり、前回の第17回で終了しました。今回の第18回からは、上記②以降のひとつ一つを詳しく解説しましょう。
ご期待ください。
おつかれ様でした。また、お会いしましょう!