【質問-29】
私は先生のセミナーで、「日本製品はなんでもありぃ!」の過剰品質と多機能であり、設計思想とその優先順位が設定されない。まるでオール5を取るような優等生を育成している進学校のようです」とおっしゃっていました。

一方、F14の「誰もスカウトしない日本人設計者」では、職場でもショックを受けました。そこで、「設計思想とその優先順位」、および、「設計書」に関して、それはどのようなものなのか、先生の大好きな零戦を事例に教えてください。

  【回答-29】
前回同様、教育の場で、零戦大好きと言われるとちょっと困ってしまいます。

でも、わかりました。

本コラムで、上記の「設計思想とその優先順位」、および、「設計書」に関して解説しましょう。

  • 実は、前回のF28の「零戦に学ぶ悪しき企画書とその対策」で、上記質問の「設計思想とその優先順位」の解説は終了しています。そこでは、零式艦上戦闘機を事例に図表29-1を掲載しました。


    【図表29-1  百均の灯油ポンプと零戦の「設計思想とその優先順位」】
  • この図表29-1が「設計思想とその優先順位」です。理解できない場合は、前回のF28をもう一度、お読みください。

1.なぜ今回も零戦が登場するの?

  • ところで、前回も今回も何故、零戦の設計を取り上げたのでしょうか?
    前回では詳しく解説しましたが、第二次世界大戦に敗北した我が国は、アメリカ軍(GHQ)から、航空機の開発を禁じられました。
  • 世の中に存在する各種製品は、民需製品と軍需製品の二つに大別できます。「設計思想とその優先順位」とは、とくに後者の軍需製品に色濃く表現されます。さらに、この軍需製品の中でも、戦闘機、最近ならジェット戦闘機の戦闘能力を司る重要な設計ファクターが「設計思想とその優先順位」なのです。

2.競合機分析とは設計思想とその優先順位を分析すること

  • したがって、敵国の戦闘機に打ち勝つためには、その「設計思想とその優先順位」を分析し、有利な航空戦法を練ることが上等手段となっています。
    逆にいえば、自国戦闘機の「設計思想とその優先順位」を探られることを最も嫌います。これを「競合機分析」と言います。言い換えれば、「設計思想とその優先順位」を理解できない企業や設計者には、競合機分析はできないと断言します。
  • 別の言い方をしますと、「設計思想とその優先順位」とは、設計書のなかで謳う、または、主張する設計者のセンスが一番問われる設計項目です。ということは、設計書が書けない企業や同、設計者には競合機分析などできません。せいぜい、稚拙な「〇×△」の評価で満足してしまうでしょう。