2.料理総長から学ぶ「見える化」
- 創業明治10(1877)年。大阪の老舗日本料理店「Ya屋」があります。そこの総料理長であったS.T氏が次のように言っています。
*************以下、重要*************** - 『最近は見える仕事ばかりで、見えない仕事を大事にしなくなりました。私は見えない仕事を大切にせな、いい料理人にはなれないと思うんです。若い時からひとつ一つを積み上げて、基礎をしっかり身につけなければと話してきたのも、そうしないと「見えない仕事」がわからないからです。
例えて言えば、盛り付け台でも、上っ面なら誰でも拭きますけど、縁までは拭いていませんね。でも、このように縁を拭くという見えない仕事こそ、実はすごく大事なんですね。
それは技術でもそうですよ。同じものを炊くんでも、昔の人は目に見えないところに実に多くの神経を使っていた。つまり、見えない仕事を大切にしてたんですね。
私たちは日本料理の技術を守っていくためにも、そうした奥行きのある仕事を伝えていかなければいけないと思っています』。 - 筆者も身につまされる思いです。
- 本コラムシリーズの「F18:機械設計者にとっての修行とは」を復習してください。
4.「見える化」でおバカになった日本人技術者とは
- 筆者の講演会が終了して、主催者である大手メディア企業での飲み会での話。話題はIoTに集中しました。酒の席におけるIoTとは、・・・世間で良く出てくる事例が以下のケースです。
- 『ある工場の生産ラインで、突然、搬送用モータが故障した。当然、ライン停止で、その企業は莫大な損失を被ることになる。一方、生産ラインには、生産技術者が毎日、そのラインの具合をチェックしている。生産技術者がいない中小・零細企業でも、熟練の作業者がチェックしているはず。それでも、突然のモータ停止。
- これを何度も繰り返していると、その企業は潰れてしまうかもしれないし、また、どんな優れた生産技術者でも、または、熟練の作業者であっても、その検知能力には大きなバラツキが存在している。また、人間は常にミスを犯す。
- そこで、そのモータに振動センサーや温度センサーを付加して、常にモニターする。いわゆる、モータ異常の「見える化」が必要だ』。
- サブタイトルの「見える化」でおバカになった日本人技術者」とは、なんでもかんでも、センサーを付けてモニターする、これが見える化だと主張しています。そして、それ以上は、何も考えない日本人技術者になってしまったというのです。
- なぜ短時間でモータ振動が発生したのかとか、発熱したのかと全く考えない、深掘りしない技術者もどきの、カンジニアの増殖です。
- 以上の現象を、「日経ものづくり 10月号(2018年)」の冒頭で、大手自動車企業の技術系幹部も述べていたのには、当事務所のスタッフ一同、ビックリしました。
- 大手メディア企業のベテラン記者も、老舗の料理長も、大手自動車企業の技術系幹部も、皆、知っていたのですね。
5.まとめ
- かつてのTQCに基づくQC活動、その中に存在するPDCA、ガラパゴス大国日本企業独特の5S、見える化、見せる化、・・・
そしてインダストリー4.0やIoT/AI、メタバース・デジタルツインと呼ばれる新たな産業革命が、日本人企業に存在しています。 - これらのもともとは、極めて有効な概念やシステムやツールなのですが、どこかの誰かが、または、どこかの企業が捻じ曲げて実行しているような気がします。
- その代表例がISO。
- 本来は当たり前の規格、当たり前の行動が規定されているのに、多くの日本企業がこれでもか!これでもか!と自分自身(自社)を締め上げていきます。
その結果、トラブル未然防止の見せる化に偏った開発ツールが氾濫し、社告・リコールが収束するどころか、増加の一途を辿っています。 - さらなる、この締め上げのストレスは、消費者を裏切る不正行為の連続です。当事務所が提案する、本コラムシリーズで、「F22:氾濫する設計ツールはオールリセット!」を復習してみませんか?
- 大手自動車企業が発するシステムや手法やツールは、その企業では有効なようですが、日本企業の99.6%を占める中小企業では不要です。むしろ、「百害あって一利なし」となっていませんか?
一度、オールリセットしてみませんか?
5.参考図書
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【↑画像クリックでアマゾンへ移動】- 当事務所のすべての書籍は、公立図書館に蔵書されています。皆様が納税者なら、税金の有効活用として、是非、公立図書館で書籍を借りましょう。
とくに、技術専門書は購入の必要はありません。
おつかれ様でした。また、お会いしましょう!
#見える化
#見える化でバカになった日本人