【質問-13】
第5回で登場した質問者です。先日、弊社の業務成果発表大会が実施されました。國井先生の教え通りに、パワーポイントの最適な文字サイズやPDPCなどを駆使して発表しました。しかし、「壇上で絶叫するな!」と役員に言われ、とてもショックです。優秀賞を獲得して「タイ工場見学+タイ旅行」のご褒美は、水の泡と消えました。技術者としての、壇上でのプレゼン方法を教えてください

【回答-13】
質問内で、「絶叫」と記述していますが、まさか、選挙演説のように「私に一票を入れてください!そして、タイに行かせてください!」という具合に、目一杯、演説してしまったのですね?
筆者は、プロのアナウンサーでもなければ、落語家や政治家でもありません。単なる下町の設計職人です。筆者の立場でよければ、技術者に相応しいプレゼン方法を解説しましょう。

トーク番組、テレビショッピング、街角の選挙演説、勤務先での業務報告会など、日常のあらゆるシーンですばらしいスピーチや、プレゼンテーションが繰り広げられています。
とくに、テレビ通販会社を営む、甲高い声で有名な社長がいました。彼が出演するテレビショッピングは「最初の20秒」でその商品が売れるか売れないかが決まると言います。だらだらしたプレゼンは、「百害あって一利なし」ということでしょう。

さて、図表13-1には、各種タイプのスピーチ(プレゼンテーション)が存在しています。
以降は、テレビショッピング用でもなく、政治家でもない新人設計者のあなたのために、コミュニケプレゼンスキルアップを解説します。



【図表13-1】

1.時代遅れの単調型プレゼン

かつては、技術者は寡黙(かもく)と言われてきました。寡黙な人が演説すると、まるで脚本を読んでいるような抑揚(よくよう)のない単調なプレゼンになりがちです。
図表13-1に記載されている代表人物としては、二度も内閣総理大臣になった人や、淡々と話す中高年の男性タレントがいます。彼らの話し方が本項の「単調型のプレゼン」です。
主張の強い現代においては、非常に不利ですし、将来のリーダーにはふさわしい話し方やプレゼンテーションの方法ではありません。もちろん、面談や面接でも不利です。

次の図表13-2は、技術者向けコミュニケプレゼンスキルアップの「技術者向け」にふさわしいデータです。本項の単調型のスピーチを音響パワーレベルに準ずる測定法で周波数分析したデータです。

注: 音源から放射される音のパワー。パワーとは、単位時間当たりのエネルギ。音源のパワーであり、音源からの距離、気圧、温湿度などには無関係。


講演中の抑揚(よくよう)に関して、そのMax-Min値を示すグラフィックデータです。単調型は抑揚の差がない、つまり、メリハリのないことが欠点です。



【 図表13-2 】

2.疲れるだけの絶叫型プレゼン

絶叫型の多くに見られる困った現象があります。それは、発表者が自分自身のプレゼンに酔ってしまうことです。したがって、プレゼン後にいろいろなアドバイスをすると怪訝(けげん)な顔をして、聞く耳を一切持ちません。絶叫型が、自己陶酔型とも言われる要因がここにあります。

図表13-1に記載されている代表人物としては、ドイツの政治家であったアドルフヒトラーがいます。青年期の頃、ドイツ労働者党の一専従職員であった彼は、周辺国や国内の政治団体への過激な演説で名前を知られるようになり、ドイツ労働者党でも有力な政治家と登りつめていったのです。
昨今、街頭や駅前で演説カーに乗って絶叫する選挙候補者たちも、この絶叫型を好んで採用しています。

一方、テレビショッピングの甲高い声の社長もこの絶叫型です。聴衆側からすれば、演説後やテレビショッピング放送後は疲労感が漂います。
技術者向けコミュニケプレゼンスキルアップとしては、この絶叫型は推奨しません。前項で解説した単調型同様の、メリハリのないプレゼンとなるからです。